降りていくブログ 

ここという閉塞から逸脱していくための考察

もう少し林竹二について

林竹二について、関心がある方がいるようだったのでもう少し書こうと思う。もし教育に関心があって、林竹二を知らなかった人が彼を知ったらひっくり返るんじゃないかなと思う。

 

僕が林竹二の存在を知ったのは、立命館大学の永橋為介さんのゼミに参加させてもらったときだった。もうこちらも故人だが、灰谷健次郎という作家で教育者の方がいた。「ろくべえまってろよ」他、国語の教科書にも載るような著作を幾つも書いた人だが、規律化されてしまった教育に対して常に批判と提言をしていた人だったと思う。

 

灰谷は自分の教育観にかなりの自負をもった人で、ちょっと傲岸なところもあったそうなのだが、ある時機会があり、林竹二の授業を見に行った時に舌をまいたという話しを永橋さんからきいた。

 

2人の著書もある。

教えることと学ぶこと

教えることと学ぶこと

 

 

 

永橋さんは、自分のことをためさんと呼ばせるので、ゼミの子達もためさんとよんでいて、僕もそう呼ばせてもらっている。ためさんのゼミは、恋愛相談があるかと思えば、ぐっと深くそれぞれの卒論のテーマに入るよう不思議な空間だった。僕はゼミ生でもないのに勝手にゼミにいれてもらっていたが、それを普通に受け入れるようなゼミ生たちだった。ゼミ生のこの感覚、意識は育てないとできないものと思う。ためさんの人を育てる力にいつも感銘をうける。

 

さて、林はWikipediaでは以下のように紹介されている。

林 竹二(はやし たけじ、1906年12月21日 - 1985年4月1日)は日本の教育哲学者。栃木県矢板市の生まれ。東北学院に学び、のち1934年旧制の東北帝国大学法文学部哲学科を卒業。専攻はギリシア哲学。プラトンについての論文がある。またソクラテスの問答法を下敷きにした人間形成論を構想した。

 

晩年は、足尾鉱山事件田中正造に関心を寄せ、評伝を書いた。また、斎藤喜博の影響を受け、全国各地の小学校を回って、自ら対話的な授業実践を試みるなど、教育の現実にかかわる姿勢が関係者の共感を呼んだ。「授業・人間について」は、本として刊行された他、グループ現代により映像化もされ、また写真集も出ている。小学生を対象に行った授業で野生児アマラとカマラの絵を教材として提示し、人間とは何かという問いを児童に投げかけている。

 

林はソクラテスの論駁法を実際に授業にもちいていた。人は、思い込みや先入観にとりまかれていて、それが取り除かれたところに初めて真なるものがでてくる。林は子どもたちに問いを投げかけることによって、安易にでてくる他人の答えを全てはぎ取る。日本のソクラテスだった。しかも田中正造の研究者でもある。ど真ん中。こんな巨人がいたのかと思う。


林の言葉を紹介されている方のブログがあった。

http://www.chiba-fjb.ac.jp/masao_n/jikiden/shugyou(10)/bunseki2.html

 

林氏は授業の核心は発言ではなく、その吟味であると言う。
 吟味とは、「何かを教えることではない。問題をつきつけて、子ども自身にこれでいいのかということを考えさせる作業」であると言う。

「学問というのは、カタルシスだといっているのです。吟味がその方法です」

林氏は子どもが変わるのは、吟味し真の否定が行なわれた時であると言う。

「学んだことの唯一の証しは、なにかが変わること」

 

「真の否定」。

 

「子どもの日常的な思考の次元、あるいは借り物の知識にたよって議論させ、その司会者に教師がおさまっている。それは、授業ではない。そこには、学習はない。きびしい自己との対決がないところに、学ぶということは成立しない」

 

「子どもたちだけでは到達できない高みにまで、しかも子どもが自分の手や足を使ってよじ登っていくのを助ける仕事」

「各自がどこまでも自分の手で、しかも自分のうちにさぐりあて、つきとめて己のものにしなければならないのです」
 「教育を、何かを教え込むことではなく、人間のうちにふかく蔵されているものを、人が自ら取り出すのを助ける仕事として捉え、しかもそのための技術を教育の中心課題として捉える」

 

こちらも故人だが演出家竹内敏晴との対談がある。非常に濃い対談。竹内敏晴もただ者ではない。幼少期は耳が聞こえなかったこともあり、普通の人が持たない感性をもっている。バカボンドで小次郎が耳が聞こえないがそのためにかえって感覚を育てたという描写があるが、竹内がモデルなのかと思った。竹内も林と同じく湊川高校に訪れ、演劇をつくる。

 

からだ=魂のドラマ―「生きる力」がめざめるために

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◼️林竹二に関する記事 

 

kurahate22.hatenablog.com

 

 

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