降りていくブログ 

ここという閉塞から逸脱していくための考察

時間を動かすこととしての学び 時間を動かすための文化空間としてのサークル

古い知り合いと話しました。

 

僕が当事者研究などやっていたという話しから、回復とかの話しになりましたが、話していて、精神的な問題があったら、心療内科なり、心理カウンセリングなりへ行ってなおせばいいというのが「一般」であり「普通」の認識なのだなあと感じました。

 

とりあえず症状的なものがおさまって、雇用された仕事ができればいい。そしてまた調子が悪くなったら治療機関へ行く。それがまだ一般的な認識なのだと思いますが、僕は自分が当事者として、それに疑問を感じ、別なあり方、別な捉え方はないのかと探してきました。

 

そして今、学びという自分の認識の更新と、世間的には不適応や生きづらさからの回復が別々のものではなく、連続的なものであり、同じものであるという認識にいたっています。

 

学びというのは、(それが含まれる時があるにせよ)お勉強をすること自体のことではなく、世界の見え方や感じ方が更新される事態のことだと思います。その更新に向けたプロセスは必ずしも学校のなかだけにあるのではありません。

 

DIYとか自律的な空間とかを持ち出す重要性は、個々人は個々人にあった環境を調整し、自分自身に提供することによって、更新に向けたプロセスは動きだすからです。それをしないとプロセス、別の言葉でいえば、その人の時間は止まったままになり、生きているなかで、たまたま場当たりに出会うことだけに更新のプロセスが依存する状況になってしまうからです。

 

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kurahate22.hatenablog.com

 

個々人の更新に向けたプロセスは、個々人によってどのように発現するか、どのようなペースで、何と反応して展開していくかというのが全く別です。なので、自分の更新に向けたプロセスに応答していくためには、必然的にDIY的な行動を取らざるを得ないのです。

 

先の投稿で、鶴見俊輔の『共同研究集団』におけるサークルを紹介しました。個々人が顔を持ったそれぞれの人として存在し、話しながら考えることもできる小集団は、止まっていた個々人のプロセスを動かすことにとって適した環境です。

 

 

kurahate22.hatenablog.com

 

 

 

学びというものがフレイレの批判する預金型教育(一方的な提供と受け取りの関係)のことだとみなされているところでは、学びが生きたプロセス、時間であることは無視されています。

 

知識ややり方の獲得が学びであるという認識のモデルだと、質問があったら最後に言ってもらえればいいとか、多人数で一斉にやろうが関係ないのですが、その時、個人のなかでおこっていることが抑えられてしまいます。

 

そこでは自律的更新に向かうプロセス、時間は止まったままです。個々それぞれのプロセスが経られる必要があるという認識が全くありません。

 

学びの本質が知識や技術の獲得ではなく、自分におこっているプロセスに応答していくことであり、止まった時間を動かしていくことだと考えるならば、従来の学びの枠組みは反転せざるを得ないだろうなと思います。

 

更新の自律的プロセスは個人が生きている間、多かれ少なかれ応答していくものであり、このように理解した時に、生きることがすなわち学びであるといえるのだと思います。

 

止まった時間、その時間は生きていて応答によって自己展開していくものですが、その時間を動かしていくことが学びであるといえるかと思います。

 

そこでは自分自身を単一の存在とみなしたり、すでに存在しているものとみなすのではなく、自分とは自意識と更新の自律的プロセスの対話であり、その動的関係性自体を自分と捉えられるのではないかとも思えます。

 

先の南区DIY読書会発表では、DIYは自分の深い感覚(つまり更新の自律的プロセス)に対する応答としてあるとし、その応答を生涯にわたって支え、展開させる力は鶴見俊輔の言うところの親問題(自身の根源的な痛み)にあるとしました。

 

そもそものDIYの位置づけ、そしてその推進のための力はどこにあるかの次に、ではどうやったら個々のプロセス、時間が動いていくことを発現させ、維持させるのかということが来ます。

 

小集団は、ちいさな文化形成(サークルをつくることは文化をつくることであるといえそうですね。)であり、一人一人が顔を持った存在としてその自発性(具体的な現れとしては、プロセスに対する素直な応答)の展開を相互に誘発しあうための変容の空間として機能すると思います。

 

小集団には、その構成員である個々の人の時間(更新の自律的なプロセス)を動かしていく文化空間をつくる機能があるのだと思います。