降りていくブログ 

ここという閉塞から逸脱していくための考察

◆読書

道中のデザイン 『モモ』と『漢方水先案内』

「なあ、モモ」と彼はたとえばこんな風にはじめます。 「とっても長い道路を受け持つことがよくあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」 彼はしばらく口をつぐんで、じっとまえのほうを見ていますが、やがてまたつ…

アシモフ「お気に召すことうけあい」より ロボットとしての憧れ 

以前住んでいたシェアハウスの住人にアシモフの『ロボットの時代』を貸してもらった。 ロボットの時代 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF) 作者: アイザック・アシモフ,小尾芙佐 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2004/08/06 メディア…

まるで埋まらない 福本伸行の『アカギ』と松本大洋の『ZERO』

『アカギ 闇に降り立った天才」は、福本伸行の麻雀マンガで、もともと『天 天和通りの快男児』で人気が高かった登場キャラの一人、アカギを主人公にしたスピンオフ作品。 アカギ 29 (近代麻雀コミックス) 作者: 福本伸行 出版社/メーカー: 竹書房 発売日: 20…

『その後の不自由』を読む 自意識の救いかた

図書館で予約していた順番がまわってきた。 その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく) 作者: 上岡陽江,大嶋栄子 出版社/メーカー: 医学書院 発売日: 2010/09/01 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 61回 この商品を含むブログ …

反応点 林竹二と竹内敏晴の「蘇生」

知人にかりている林竹二の「学ぶこと変わること 写真集・教育の再生をもとめて」を読み終わった。教育哲学者、林竹二は兵庫県の湊川高校で生徒たちに対して、授業を行った。 学ぶこと変わること―写真集・教育の再生をもとめて (1978年) 作者: 林竹二,小野成…

雪を踏みながら

朝から雪が降っていた。珍しく日中も降り続ける。 夜勤帰りで、叡山電車から駐輪場まで歩いていく。靴が底から浸みるので、足も冷たい。 しかめっ面で寒いなと 思いながら周りをみていると、ふと気持ちがあがっていた。ここのみんなが同じ目にあってるんだな…

岐阜芸術フォーラム発表原稿その2 生存圏を重ねる

フォーラムの原稿その2です。 ーーー2 この世界で自分として生き残ること 憲法で保証されることが定められている「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉がありますが、これは人が自分で自分をエンパワメントしていけるための最低基準だということだと…

超贋作サロメを観に行った 呼びかけ 祈り ちいさな演劇

劇団衛星さんの超贋作サロメを観に行った。本来なら21日に観に行くはずだったけれど、いつの間にか思い違いをして明日行くと思い込んでしまっていて今日気づいた。明日の公演はオイディプス王のみなので2本観るなら今日いかねばならなかった。青いバット…

ドラゴンボールの17号 意味のつくりかたの話し

ドラゴンボールの人造人間17号は少なくともマンガのほうでは、ほぼストーリーを展開する都合上存在していて、それ以上のことは描かれていない。姉の18号(ジョディ・フォスターがモデルとのこと)がクリリンと結婚したり、その後の天下一武道会に登場したり…

もう少し林竹二について

林竹二について、関心がある方がいるようだったのでもう少し書こうと思う。もし教育に関心があって、林竹二を知らなかった人が彼を知ったらひっくり返るんじゃないかなと思う。 僕が林竹二の存在を知ったのは、立命館大学の永橋為介さんのゼミに参加させても…

看取り看取られ部続き1 生態系をつくる

先のエントリーで、看取り看取られ計画の話しをした。 看取り看取られ計画 - 降りていくブログ しかし介護のこと制度のことなど全然知らないので、とりあえず知り合いで、ケアマネやっている方や、ケアマネ資格の勉強されている方に話しをききにいく予定。メ…

やってやった感 モードに入れる 中島敦『D市七月叙景』

中島敦の短編「D市七月叙景」。 一度読んだ時は特に何も思わなかったのだけれど、院生時代の共同研究室で一緒だった後輩がすごく好きだということで、読み直してからいいなと思い出した。 中島敦全集 別巻 第2版 作者: 中島敦 出版社/メーカー: ペガサス 発…

絶望が個に返されている 水俣と緒方正人さん

水俣の漁師、緒方正人さんと哲学者の廣瀬純さんの対談「絶望が個に返されている」を読んだ。 緒方正人さんは、水俣病で父親を失い、自身も水俣病になるなかで、国や公害企業と裁判闘争していたが、ある時点で自ら認定患者であることを取り下げて、個人として…

人間のいるところ

あるコミュニティにおける人と人との関係性は、どんなときにいい感じになるのか、と思っていたけれど、一つは移民同士の関係性のようだ。岡壇『生き心地良い街ーこの自殺率の低さには理由がある』の徳島県海陽町の事例や、大阪の釜ヶ崎の労働者同士の関係な…

苦しみを利用する シルヴァスタイン『ぼくを探しに』

12月に京都でzineを売る催しがあってその原稿を書いている。心理学科に入ったり、歩いて四国八十八カ所巡りをしたりしながら気づいてきたことは、人は適切な環境と媒体があれば自律的、無意識的に回復への運動をおこしだすということだ。直面する苦しみが…

希望という言葉

森絵都さん、『カラフル』以来だった。こんなテーマも扱われていたんだなと思う。そのときから人間の欺瞞の先にあるものを探されていたのではないかと思う。牛たちの姿は、社会が人間をどのように扱い、踏みにじっているかの実相。牛は、人間の姿。 「生きる…

回復の方法論と言葉のエクソシズム

それぞれの生きづらさがあって、生きづらさにも社会的要因もあれば、身体的要因もある。様々な生きづらさがあっても、基本的には生きていくように体が要求してくる。 それでサバイバルしていくわけだけれど、サバイバルというのが生きている状態をかろうじて…

ブックレビュー『ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観』

ブック・レビュー ダニエル・L・エヴェレット『ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観』 ■この本を選んだ理由 武術家の甲野善記さんがこの本に痛く感銘を受けたというつぶやきをみて、まずこの本を知りました.右左の区別がないこと、数の概念がないこ…

ブックレビュー アサダワタル『住み開き 家から始めるコミュニティ』

アサダワタルさんの「住み開き〜家からはじめるコミュニティ〜」のブックレビュー、参加者は住み開きを経験した方やこれから始めようとする方などで、それぞれの経験、活動や今後したいことなどの話しが盛り上がりました。 著書のなかでは、東京、大阪ほか各…

ブックレビュー 名越康文『自分を支える心の技法』

■この本を読んだ理由 Twitter上で武術家の甲野善紀さん、身体教育研究所の野口裕之さん、内田樹さんたちと名越さんがやりとりしているのを知り、時代や思想をリードする人たちが一緒にいるものだなと思っていました。そのなかで甲野さんが名越さんに「甲野さ…