松本大洋「ZERO」では主人公のボクサーが自分の相手に出会えないまま30歳をむかえたときに、自分と同じ狂気をもつ若きボクサートラビスと出会い、闘います。
主人公の「時間」はそのトラビスと出会うまでは止まっていました。どのボクサーも彼にとっては彼を解放してくれる相手ではなかったのです。
僕はジャンル難民ミーティングでは、その人のさしおけない問題意識やテーマを聞いてみたいと思っています。
なぜなら、たとえそれが趣味のようなものであっても、それはその人が妥協を許さない一点だからです。その人が別に右でも左でもいいとしているようなことは興味がないのです。
その人の妥協のない一点は、その人をも超えているものであると思っています。
その人のなかで、その人自身もどこにいこうとしているのか知らないようなものがそこで動こうとしているのを感じます。
僕にとって、話しとはそのお互いの妥協のない一点でするものなのであって、そうでないと僕の「時間」は動かないのです。
僕の「時間」が動くためには、誰かの「時間」が連動して動くことが必要なのです。
主要な問題関心、さしおけないテーマとは、動こうとしている「時間」です。
応答によってその力を借りるとき、それはぐるぐると同じところをまわる世界から自分を移行させていってくれると思います。