夕方から雨が降り出した。烏丸ストロークロックの「神の谷第二隧道(かみのたにだいにずいどう)」を観に行った。隧道とはトンネルのこと。
神の谷第二隧道 作品紹介
輸送トラックが行き交う、国道9号線沿いの町「大栄町」。昭和の高度成長期に土木利権によって興ったその町も、平成の長引く不況にあえいでいた。
ある日、大栄町に井上春香が帰ってくる。人々は喜んだ。なぜなら、彼女が亡き父・井上文明がかつてふるった政治体制を引き継ぐことで、工事半ばで中断した新神ノ谷トンネルの建設が再開するからだ。そしてトンネルの向こう、現在では愛好家の他に誰も訪れることのない「神ノ谷」が再び開発され、忌まわしい過去ごと消え去ることを願った。
やがて、人々の願いは叶えられた。井上春香の手にするハサミによって祝福のテープは断ち切られ、オレンジ色に包まれた車の行列がゆっくりと真新しいトンネルを進んだ。そしてその陰で、役目を終えた「神ノ谷㐧二隧道」のプレートは降ろされ、作業員の唾と共に背高泡立草の茂みに遺棄された。
2013年。地方都市「大栄町」を舞台に、資本主義の顛末と翻弄される人間の本質を膨大なモノローグと共に立ち上がらせ、各地で称賛を浴びた『国道、業火、背高泡立草』のさらなる完成形を目指す、スピンオフ作品の上演。京都・東京・津 3都市ツアー2014 『短編 神ノ谷第二隧道』 | 烏丸ストロークロック - Karasuma Stroke Rock
75分の上演時間があっという間だった。打ち捨てられて荒廃していく人たちの空虚さ。「普通の世界」のすぐ脇にある闇の深さ。踏みにじられていくもの。観れてよかった。
正直なところ、芸術とかアートに関するリテラシーは僕にはあんまりなく、観に行っても7割方よくわからない。ぼんやりした印象しか持てない。反応できる範囲が狭い。自分が反応できるところは、極端に僅かなように感じる。
反応できるのは、人の救われなさを感じられるときかなと思う。過剰な残虐さとかは別にいらないけれど、心をえぐる闇を感じたい。どうしようもないものに出会わないと自分は救われないような気がする。
前に付き合っていた人が、僕と話しをして、何かが明らかになっていくことが怖いというようなことを言っていた。だから価値観や世界観的なところで話しをするのは止めたそうだ。他愛ない話し、具体的な話しだけをするようにしてたのかなと思う。僕のほうも、人が話したくないことをわざわざ話そうとする気はおこらない。空しさが増すだけだから。その時にもう終わってたんだろうなと思うけれど。
嫌がらせのつもりはないけれど、この社会が提示する理屈で納得できる人にとっては、僕の言うことはひたすらネガティブだと思う。僕はそこでは救われないものが回復し救われていくための理屈を探している。
この現実の闇を受け入れないほうがまだ生きていきやすいと実感しているのなら、それを選択するしかないわけだし、仕方がない。
劇を見たあともまだ少し雨は降っていた。歩いて帰った。
「神の谷第二隧道」はどこか僕のような感覚を持っている人にはいい作品だと思う。東京と三重でも公演は行われるようです。
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