降りていくブログ 

ここという閉塞から逸脱していくための考察

ジャンル難民学会(仮)の活動を展開させるにあたって

思わぬ流れから、ジャンル難民学会(私の探究・研究相談室)を一般社団法人化しないかという提案をいただきました。

 

最終的に一般社団法人化するかどうかはひとまずおいて、この機会に去年から半年間、こじんまりやってきた活動をもう展開させてみようと思っています。これまで考えてきたことを盛り込める機会でもあると思い、挑戦してみます。

 

盛り込みたいと思っているのは、四国八十八か所めぐりをモデルとした、メタコミュニティを派生させる仕組みです。

 

まず四国八十八か所めぐりというのは何かから説明すると、四国八十八か所めぐり(四国遍路)とは、四国に点在する八十八か所の弘法大師ゆかりの寺(札所)をめぐる巡礼です。

 

そこで個々の寺は、八十八か所めぐりのために出来たのではなく、八十八か所めぐりがたとえなくても自立して存在しています。しかし、そこに八十八か所めぐりというコンセプトがあるために、そこにより多くの人が毎年訪れ、札所、そして札所と札所をつなぐ遍路道では札所以上に様々な出会いや交流が生まれます。

一つの寺を一つのコミュニティだと考えます。一つのコミュニティはある一定のまとまりをもち、閉じています。コミュニティは外部との循環や相互作用が弱くなると、だんだんと型が決まってきて、勢いも落ちていきます。

 

だいたいどんなコミュニティも、そんなに頻繁には他のコミュニティと付き合うということはないのかなと思います。しかし、八十八か所めぐりは、コミュニティとコミュニティとの間に絶え間ない人の移動があるので、常に状況が更新され、場が活性化しています。

 

たとえば、僕が住んでいる京都には、様々な学びの場(コミュニティ)があるけれども、個々のコミュニティはお互いをどれだけ知っているだろうか、実際はほとんど知らないのではないかと思って、去年やったのが「学びの場めぐり」という京都自由学校の企画です。

 

ユニークなことをされている学びの場を6か所ほどピックアップし、8人ほどで巡るということをしました。巡ること自体が遊びでもありますし、すぐ定員が埋まりました。そしてそれぞれの場所をめぐりながら、学びとは何かという問いを哲学カフェ的に考えました。

 

その企画はそれぞれの場所に一回訪れるだけでしたが、八十八か所めぐりのようにたくさんの人が絶え間なくその間を巡り続けるということがもしおこれば、それぞれの学びの場を全部含めた大きな場、メタコミュニティともよべるような場が生まれるのではないかと思いました。

 

そんなふうになれば、単にそれぞれの学びの場が活性化し、その情報がひろがるというだけでなく、様々な出会いや交流がおき、そしてその出会いや交流が派生して何かがおこるだろうなと思います。そういうことができないかと思っていたのです。

 

デンマークでもにたような事例があって、デンマークは高校と大学の間にもう一ついける学校があります。私塾なのですが、それが国の補助を受けていてデンマーク全国にあり、高校を出た若者たちは、自分が学びたいことを学べる私塾にいきます。

 

それぞれの私塾は全寮制であり、お金持ちの子も貧しい家の子も同じ場所で過ごすそうです。そうして、自分の学びたいことを求めて、様々な私塾をめぐって、21歳ぐらいで大学に入学するということも珍しくないそうです。そのように、全国にある私塾を若者たちがぐるぐるまわっているわけです。

 

デンマーク原発が建てられるという話しが出たとき、市民は強い行動をおこし、それを阻止できたそうなのですが、その阻止にはこの私塾で作られたネットワークが功を奏していたと聞きました。様々な人が出会い、一緒に住み、関係性を育てることと、個々のネットワークが継ぎ接ぎとなって、大きなネットワークになっていたのだと思います。

 

四国八十八か所における寺が、デンマークにおいては全国各地に存在する私塾にあたるわけです。たくさんのコミュニティがあり、そこを絶え間なくめぐる人がいて、その結果として大きなメタコミュニティが生まれ、政府の決定をくつがえせるほどの力を持ち得たのです。

 

この仕組みをつくることはできないかと思っていたのですが、基本自分のやる催しはこじんまりなので、実現しそうにありませんでした。

 

ですが、ジャンル難民学会というかたちならできるのではないかと思いました。ジャンル難民学会は、自分の核心的な関心の探究や研究を、既存の制度やジャンルに必ずしもこだわらず自由に発表するというものなのですが、この趣旨に賛同してくれる人たちが住んでいる各地で、それぞれに発表する場所を作ってもらい、発表会の際にはそれをコミュニティ外部の人も聞きにいけるというかたちにするなら、相互のコミュニティの間に人の行き来ができて、循環がおこるのではないかと思ったのです。

 

とりあえずそういうかたちにしてみようと思い、FBで声をかけてみると、割に応じてくれる方たちがいました。兵庫県とか、神奈川とかでやってみたいという方も現れました。発表の場をつくるといっても、別にお金がかかることでもないので、やってもらえる方は今後も現れそうに思えます。

 

既存の仕組みや手続きに必ずしもこだわらず、自分の核心的な関心の探究や研究をして発表する場をつくるということ。そして、その趣旨に賛同してもらえる各地の人に同じような発表の場をつくってもらう。そしてお互いの発表が可視化されるようにして、そこに人の行き来を生む。

 

とりあえずこういったかたちを作っていこうかなと思っています。