まだバイオハザードで。
映画のように編集してくれている動画があり、前編と後編あわせて4時間近いものを観ました。
作品への愛を感じます。自分の好きなものをまたどう生かそうかと考える人のつくったものだと思いました。
前編
後編
後編を編集した作者のセリフ。後編だけで5ヶ月かけて作ったとのこと。
後編を楽しみにしてくださっていた方々、大変お待たせしました。プライベートが色々と忙しくてなかなか動画作りに時間を使えず後編をアップするのが前編をアップしてから約10ヶ月後になってしまいました。少し動画製作でのエピソードを書かせていただきます。実は最初は後編のアップは良いやと思っていました。別に作らなくても良いや(笑)と。でも前編をアップしたところいつのまにか1万、10万と再生されていき「すごく面白かった」や「後編早く作って!」などの催促の(笑)嬉しいコメントをいただき、あっこれは作んなきゃな(汗)と思い去年の12月から作り始め5ヶ月かけてゆっくりじっくり丹精込めて作りました!ぜひ最後まで見ていただけたら嬉しいです。
バイオハザード6、あらためていい物語だなと思いました。
もちろん何もかもいいというのはなくて、たとえば、正義の大統領が補佐官に殺されて、その後の意思を継ぐ的な、レオンの立場の物語とか、クリスの軍組織のなかの自己犠牲の物語とか、そういうのはどうでもいいをこえて、国とか軍とかを美しく描くなよなと思いますが。
しかし、クリスが部下をウイルスで怪物にされてしまい、記憶を失って飲んだくれになる設定はよかったです。
エンデの『果てしない物語』で主人公が自分を失い、かっこ悪かった自分までを忘れてしまってダメになるところを思い出しました。当時は児童文学で主人公がここまで自分を失うシーンってあまりないのではないかと思いました。ぞっとする感じがありました。
クリスは部下のピアーズにサポートされ、実戦のなかでだんだんと自分を取り戻していき、記憶も取り戻しますが、偽エイダに対する激情に突き動かされ、一人で暴走し、結果として仲間たちをまた次々と犠牲にしてしまいます。黒から白に急に反転するのではなく、回復中も過ちをおかしていくシーンが響いてきます。
ピアーズは、かつてのクリスに心酔していたので、クリスの変化にはだいぶ失望していたと思いますが、それでもクリスの本来の姿を信頼し、自分の存在をかけてクリスと向き合います。クリスが現実から逃げようとしたり、自暴自棄気味になったりしたときは、怒り、厳しくいさめます。ピアーズの怒りには傷つきが感じられます。ピアーズは、自分が傷つくことをかけてクリスを全面的に信頼しているのです。
もし誰かに全面的な信頼をおいてそれが裏切られたら、信頼の分だけ自分は大きく傷つくでしょう。だから普通は、その人をみて、自分が傷つくような距離感には入らないのだと思います。しかし、ピアーズはその傷つきを構わずに、むしろ傷つくぶんだけクリスに自分の信頼や尊敬を伝えていました。どれだけ自分がクリスを信頼し、尊敬しているのか、その証がピアーズの傷つきとしてクリスに伝えられるのです。(後編の42:25あたり)
そういう怒りのあり方があるんだなあと思いました。その怒りは別のシーンでもありました。ジェイクとシェリーのシーンです。(後編の10:40ごろ)
ウイルスの抗体をもつために組織に追い回され、苦しめられるジェイクは、自分の運命を翻弄する父の存在を恨み、自己憐憫に陥って投げやりになります。
それに対してシェリーは、怒りをこめながら、親をどれだけ非難してもいいけれど、あなたはあなたに対して責任をもつ必要があると伝えて部屋を出ていきます。シェリーの怒りもまたジェイクに対する信頼を自分自身の傷つきとしてあらわしたもののように思えます。
シェリー自身も親に運命を翻弄され、耐えきれない実験を繰り返されてもきたのですが、まっすぐな眼差しと精神を失っていないキャラです。シェリーにとって、自分を蝕んでいく否定的な思いを跳ね返してきたものは何だったのでしょうか。
人を蝕む考えの侵入を許さない強い意思。それはシェリーが自身を押さえつける圧倒的な重圧に対して、生きていくために見つけたものだったのではないかと思います。
ジェイクの自己憐憫に満ちたセリフは、かつてのシェリー自身の過去を彷彿させたのではないでしょうか。フラッシュバックのように戻ってくるあの時。ジェイクの姿は、「お前もそうだろう? お前も俺と同じだろう?」とシェリーに迫り、かつての闇に吞み込もうとしていたのではないでしょうか。
馬鹿にするな。私の生はそんなものではない。そんなものに殺されてしまうようなどうでもいいものではない。シェリーの怒りは、生きることに対する侮辱への怒りだったのではないかと思います。その傷つきの表現は、ピアーズのものと同じく、まとわりついてくる暗い影をはねのけ、相手を震わせるものになったのだと思います。