降りていくブログ

生き残りながら回復していくために

6/13 星の王子さま読書会

第10回星の王子様読書会。

 

星の王子さま (平凡社ライブラリー (562))

星の王子さま (平凡社ライブラリー (562))

 

 

 

 

花との別れの場面。王子は花に「さようなら」という。一度目に返事はなく、もう一度繰り返したとき、花はこれまでも自分が都合が悪くなったらしていた嘘の咳をまたしたが、その後「わたしっておばかさんだったわね」、「ごめんなさいね。しあわせにおなりなさいな。」という。王子は花がそのようにやさしいことを言うのに驚く。

 

なぜ花が変わったのか。僕は王子が星を捨てることによって、花の「殻」が壊れたからだととらえた。自分の奥にある気持ちや願いよりも殻は強く、それは生きていくなかで知らず知らずに厚くなって自分を疎外していく。殻のほうが自分を支配する。

 

だが生きているなかで、その殻は時々修復ができない亀裂をいれられることがある。それは生存レベルの危機をもたらすかもしれないが、そのことによって人は殻が規定する延長でしか振る舞えないあり方から、別のあり方をひらかれると思う。

 

僕は、人は自然と厚くなっていく殻により自分を疎外していくことを自分だけでは避けられないと思っている。固くなった殻は出来事などを含む第三者から、自意識のコントロールの外から壊される。それは多くの場合、悲劇的なことだろう。しかし、その時人は殻によって今まで支配されていた状態、明日のために今を犠牲にするような欺瞞性からも放たれる。深い回復のためには、そのような傷つきが必要なのだと思っている。

 

四国遍路に衛門三郎譚というのがある。豪農衛門三郎のもとに弘法大師が托鉢に訪れるが乞食とみた衛門三郎は弘法大師を八度追い払う。八度目に衛門三郎は竹ほうきで托鉢を叩き落とす。手から落ちた托鉢の鉢は八つに割れた。その後衛門三郎の子ども8人は1年ごとに次々と死んでいった。8年目、全ての子どもを失った衛門三郎は悲しみ打ちひしがれ、巡礼の旅に出る。

 

欲深く、鬼のような男でも悲しみに打ちひしがれ、生きることを虚しく思うような状態になるのかと思う。よくある話しかもしれないが、それまで持っていた大事なものを失った人の姿には心が強く動く。

 

映画「チョコレート」において主人公はマッチョで人種差別主義者だった。彼の息子は、目の前で彼の父親としてのあり方を強く批判したあと「愛している」と言葉を残して拳銃自殺した。強固な殻をもち、変わることなどありえなそうに見えた主人公ももはや同じようには生きられず、今までとは違う歩みをはじめることになった。

 

チョコレート(字幕版)
 

 

 

衛門三郎やチョコレートの主人公が遭遇したのは、殻が壊れる事態だと思う。

 

花の殻には、修復不可能な亀裂がいれられた。今まであったものを失い、押し寄せる痛み。だがその時に自分の奥にあった気持ちに応答するという選択もまた可能になるのだと思う。それまで抱え込んでいた大事なものを失ったとき、もう何もためらう必要もないし、隠す必要もない。そんなことをしても割りに合わない。社会の抑圧や傷つきがあっても、自分に率直に応答しながら生きる人は多分、この割りの合わなさを知っているのだと思う。今を生きること以外、本当に割りに合うことはない。

 

花は意識的な行為としては、それまでずっと王子から奪っていたと思う。だが、最後に花がしたことは、王子に与えることだったと思う。王子は、星を去るとき、花を捨て、花を深く傷つけた。だが花は最後に王子に与えた。

 

王子はその後様々な役割に従事する大人がいる星々を巡る。大人たちは皆その役割に同一化するあまり、大事な何かが見えなくなっていたり、生きものとしての自然な生理を奪われたりしている。王子はその奇妙な姿に対して問いかけ、そして去っていく。純粋な王子に彼らは傷つけられたように思う。

 

地球にいたって、王子は花に対する自分のあり方の間違いに気づき、後悔する。なぜ王子が気づいたのか。僕は、それは王子がその無自覚さゆえに、花を傷つけ、星々で出会った人たちを傷つけてきたことによるのではないかと思った。傷つけることは、相手が王子の何かを確かに受け止めたということであっただろうし、そしてその彼らの心の痛みが王子に伝わることにより、王子は疎外された人間の痛みを感じる心を得たのではないかと思う。傷つけられることは、与えることでもあるのだろう。

 

読書会は21時には終わったけれど、残って2時まで話しをしていた。自分の財産というのは失って痛みを感じないものなのではないかという話しとか。所有している間は、生きた関係にはなれないという矛盾があるのかと思う。

 

釜ヶ崎の本田神父の話し。「釜ヶ崎と福音」という彼の著書を紹介してもらった。読もうと思う。