降りていくブログ 

ここという閉塞から逸脱していくための考察

黒子のバスケ事件の最終陳述を読んでいく1

はてなで注目記事を直近のアクセス数で設定していますが、黒子のバスケ事件がずっと不動の1位。関心が高いんでしょうか。渡邊被告の最終陳述はA4用紙に44枚の長文です。実際には時間を10分に限定され、一部のみの陳述となったようです。

全文はネットで公開されています。月刊『創』によると、渡邊被告は篠田さんの求めを受けた香山リカさんによって差し入れられた「被虐うつ」について書かれた精神科医の本を読み、自分がなぜこうなったのかの原因や全体像を理解したようです。

渡邊被告、独自の概念「浮遊霊」「生霊」「キズナマン」などを使いつつ、自身や社会を分析している内容はかなり真に迫ったもの。周りの友人たちもその内容の濃さ、鋭さに衝撃を受けていました。また渡邊被告自身は、このような陳述をしても理解はされないだろうと自身で述べていましたが、渡邊被告の罪はともかく、人がそうなってしまう実態の分析に、核心をついていると感じた知り合いは何人もいました。

 

これはもう少し、しっかりと読む価値があって、それを何人かで話したいと思い、小さな集まりをつくりました。また今月もやるつもりですが、そこでシェアしたことをこちらでも紹介します。

 

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9/20 コモンズゼミ発表原稿転載
 渡邊被告は、人や社会とのつながりを失ってしまった人を「浮遊霊」と呼び、それがさらに犯罪のような行動化までおきる状態になった人を「生霊」と呼んでいます。渡邊被告は自身を「生霊」としています。

 

被告は、月刊創の編集長篠田さんが香山リカさんに依頼し選んでもらった書籍、高橋和己医師の『消えたい虐待された人の生き方から知る心の幸せ』を読んだことで、「自分がどのような人生を送ってしまったのかを全て理解でき」た、と述べています。

 

被告は、人と関わることを可能とする根源的な基盤として、「安心」をあげます。この安心はほっとするぐらいの普通の意味とは次元が違い、「人間が生きる力の源」のことを指すと強調されています。

 

被告は、幼児が怪我をした際に母親から共感され、寄り添われることによって「痛い」という意味がわかるとします。このときにつくられた意味が前提としてあるときに、「危ないことはしないで」というような母親からの求めが受け止められると考えます。 もし、痛い思いをしたときに、寄り添われながら意味を与えられることがなければ、心における意味はつくられず、よって母親の求めに喜びをもって応答することはおきない。逆に寄り添われながら共同体験としてつくられた意味があれば、母親の求めルールの提示に応答することができる。 被告は、これを「規範の共有」と呼びます。

 

寄り添われ、共同体験としてつくられた「意味」があれば、「〜しないでほしい」ということもまた単なる制限ではなく、共にあること、共に生きていることの証となる。 そしてその規範を守ることで、危険や不快が避けられることを確認すれば、それがまた安心=生きる力の源になるとします。 渡邊被告の「安心」とは、生きる喜びを感じられるような状態で、存在を祝福され、喜ばれているような状態だと僕は受け取りました。

 

イギリスの小児科医ウィニコットが、「幼児は母親をみているのではなく、母親の目に映っている自分をみている」と指摘していますが、幼児にとって自分の存在を含めた意味は母親(重要な他者)を鏡として映ったところにしかないのであって、そこに作られた意味を動かないものとして自分に取り込み、内在化されていくことによって、母親以外の人とも関われる能力、応用力がついてきます。

 

渡邊被告は、そもそも意味をつくる段階においてそれが形成されなかった。無視されることを含んだ虐待のなかで育ち、学校や塾で、教員や講師からの暴力があり、生徒からの過酷ないじめもあった。このような環境では、規範を守ることは、恐怖などの圧力による強制によってしかなされないので、苦痛なものでしかなく、また努力が報われることなどそもそも想像すらできない状態にあった。

 

渡邊被告は、何かをしたら何かが得られる(かもしれない)という期待がそもそも存在しない状態について述べています。それは鬱病になった状態でそれまでの考え方や意志的な努力が無惨なほど役に立たないような、操作不可能な水準にいる状態のようなものであるのかと思われました。

・・・と、書いてきましたが、渡邊被告の陳述がそれを聞くものから呼び起こす力はとても大きく、それを読んでともに引き起こされたことを話してみるということのほうが意味が大きいと思います。僕も触発されたものを展開しているだけです。 教科書的に、書いてあることを鵜呑みにしたり、擁護したり、あるいは断罪したりするのではなく、しかしこの全文を渡邊被告からの贈り物として読んでいきたいと思っています。
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以上転載終わり

こちらも参考に。加藤被告だけでなく、渡邊被告への言及あり。


秋葉原事件・加藤智大被告からの2回目のメッセージ(上)(篠田博之) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

 

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